これまでのコラムでは、五臓・五行、
そして五臓が支え合う「相生」、
行き過ぎを抑える「相剋」についてお話ししてきました。
今回は、東洋医学を理解するうえでもう一つ欠かせない、
☯ 「陰陽(いんよう)」についてお話しします。
「陰陽」と聞くと、なんだか難しそう……。
そんな印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
でも実は陰陽は、特別な世界の話ではありません。
朝が来れば夜が来る。
動いたら休む。
暑い日があれば寒い日もある。
私たちが毎日当たり前のように
経験していることの中に、陰陽の考え方は
たくさんあります。
☯ 陰陽とは「反対の性質」を表すもの
まず、とても簡単に考えてみましょう。
| 陽 ☀️ | 陰 🌙 |
| 昼 | 夜 |
| 明るい | 暗い |
| 暑い | 寒い |
| 動く | 静止 |
| 上 | 下 |
| 外 | 内 |
このように、世の中には反対の性質を持つものがあります。
東洋医学では、それを大きく
☀️ 陽
🌙 陰
という二つの性質に分けて考えます。
ただし、ここで大切なのは、
陽が良くて、陰が悪いわけではありません。
昼だけが続いて夜がなければ、私たちは休むことができません。
反対に、夜だけで朝が来なければ活動することもできません。
陰と陽、性質が異なるだけでどちらも必要なのです。
🌿 「動く」と「休む」も陰陽です
私たちの一日を見てみましょう。
朝になり、起きて、仕事や家事をする。
これは「動く」時間なので、陽の働きです。
そして夜になり、体を休め、眠る。
こちらは「静かに休む」時間なので、陰の働きです。
☀️ 活動する「陽」
↓
🌙 休息する「陰」
↓
☀️ また活動する「陽」
この繰り返しがあるから、
私たちは毎日生活することができます。
活動と休息も、どちらか一方だけでは成り立ちません。
これも陰陽の考え方です。
陰と陽は、いつも同じではありません
もう一つ、陰陽には大切な特徴があります。
🌿 陰と陽は絶えず変化しているということ
一日を考えてみると、
とても分かりやすいでしょう。
朝になると少しずつ明るくなり、
昼に向かって陽の性質が強くなります。
そして夕方になると陽は少しずつ弱まり、
夜の陰へと移っていきます。
夜が深まり、その先にはまた朝がやってきます。
陽から陰へ。
陰から陽へ。
自然界では、これを毎日繰り返しています。
私たちの体も同じように、ずっと一定ではありません。
例えば 暑くなれば、体は冷まそうとする
夏の暑い日に体温が上がると、私たちは汗をかきます。
これは体にこもった熱を汗として毛穴から外へ逃がして、
体温を一定に保とうとします。
反対に寒いところでは、
体は熱を逃がさないように毛穴を閉じたり、
身震いによって陽気が高まるように働きます。
つまり体には、どちらか一方に傾きすぎたら、
元のバランスへ戻そうとする働きがあります。
これも陰陽を身近に感じられる現象の一つです。
🌿 体の中にも陰と陽があります
東洋医学では、私たちの体の働きも陰陽に分けて考えます。
☀️ 陽の性質
- 温める
- 動かす
- 活動する
- 外へ向かう
🌙 陰の性質
- 冷ます
- 潤す
- 休ませる
- 内に蓄える
といったものです。
ここでも、どちらかが優れているということではありません。
温める力も必要、
熱くなりすぎないよう冷ます力も必要。
活動する力も必要ですし、
休んで回復する時間も必要です。
陰と陽が互いに働くことで、
私たちの体は一定のバランスを保っています。
🌿 「冷えているのに、顔はほてる」も不思議ではない?
人の体を陰陽で考えていくと、もう少し面白いことが見えてきます。
例えば、
「手足は冷たいのに、顔はほてる」
という方がいます。
一見すると、
「冷えているの? 熱いの?」
と思いますよね。
でも人の体は、単純に「冷たい」「熱い」のどちらか一つに
分けられるものではありません。
上と下、体の表面と内側など、
場所によって陰陽の状態が異なることもあります。
こうした体の複雑な状態を整理して考えるためにも、
陰陽という物差しが使われます。
🌿 陰の中にも陽があり、陽の中にも陰がある
陰陽は、きれいに二つに分けられるものでもありません。
例えば夜は「陰」ですが、夜が深まれば、やがて朝へ向かいます。
昼は「陽」ですが、昼を過ぎれば少しずつ夜へ向かっていきます。
🌙 陰の中にも陽へ向かう動きがあり
☀️ 陽の中にも陰へ向かう動きがある
あの有名な「陰陽マーク(太極図)」
の白い部分に黒い点、
黒い部分に白い点が描かれているのも、
この考え方を表しています。
陰と陽は完全に切り離されたものではなく、
互いを含みながら変化し続けているのです。
🌿 陰陽は「自然と体を見るための物差し」
こうして考えてみると、陰陽は決して難しいものではありません。
昼と夜。
暑さと寒さ。
活動と休息。
外と内。
上と下。
私たちの身の回りには、たくさんの陰陽があります。
そして東洋医学では、人間も自然の一部として、
「今、この人の体はどちらに、どのように傾いているのだろう?」
と陰陽の視点から体をとらえていきます。
大切なのは、陰か陽かを決めつけることではありません。
陰と陽が互いに支え合い、
変化しながら、
全体としてバランスを保っている。
まずはこれが分かれば、陰陽の基本は十分です。
「陰陽って難しいものだと思っていたけれど、
私たちの毎日の中にもあるんだ」
そんなふうに感じていただけたら嬉しいです!
🌿 次回予告
そして、陰陽とともに東洋医学で体の状態を判断するときに大切なのが、
⚖️ 「虚(きょ)」と「実(じつ)」
という考え方です。
簡単にいえば、
体に必要なものが不足しているのか。
それとも、邪気(不必要な気)が強く体に負担をかけているのか。
という見方です。
ただし実際の体は、そんなに単純ではないんですよ。
次回は「虚実」をできるだけ分かりやすく、
そして実際の臨床ではどのように考えているのかも
少し交えながらお話しができたらなと思っています。


