― シゼンタイ大山を訪ねて ―
私は鍼灸師として人の体に向き合う一方、
「シゼンタイFUKUYAMA」という活動にも参加しています。
『シゼンタイ』とは、
農薬や肥料、除草剤に頼らず、
土や植物が本来持っている力を生かす「自然栽培」
を全国に広げている活動です。
福山でも、この活動を仲間と一緒に、
田んぼや畑で自然栽培に取り組んでいます。
今回は、鳥取県・大山で活動する「シゼンタイ大山」を訪ねました。
参加するのは今回で二度目。
そこで目にした稲や土の姿から、
改めて自然が本来持っている力強さを感じる一日となりました。
🌿 人の健康と自然環境をつなげて考える
まず訪れたのは田んぼです。
シゼンタイ大山を率いる桐村里紗さんから、お話を伺いました。
桐村さんは医師であります。
そして桐山さんは「プラネタリーヘルス」、
人の健康を体だけで考えるのではなく、
食べもの、それを育てる土や水、自然環境とのつながりから考えて、
地域の中で実践されています。
今回は、シゼンタイで栽培している「朝日」という
品種のお米についてのお話もありました。
「朝日」は今人気の粘りの強いお米とは少し違う、
さらりとした特徴を持つお米ということや
お米のでんぷんと健康との関わりについてのお話もあり、
鍼灸の仕事をしている私にとっても興味深い内容でした。
医師としての視点を持ちながら、
実際に土に触れ、地域の人たちと一緒に取り組む。
そんな桐村さんの活動を現地で見て学べることも、
大山を訪れる楽しみの一つです。
🌾 あぜ道一本を挟んで、こんなに違う!
あぜ道のこちら側には、シゼンタイ大山の稲。
向こう側には、一般的な方法(農薬、化学肥料)で育てられた稲。
距離にすれば、ほんの数歩です。
ところが、両方の稲を抜いて並べてみると、
「えっ、こんなに違うの?」
と思うほど、その姿が違っていました。
シゼンタイの稲は、苗を一本ずつ植えています。
その一本から茎が何本にも増え、
土の中には太く長い根が大きく広がっていました。
根元からしっかりと立ち、穂もついています。
一方、比較のために見せていただいた一般的な方法で育てられた稲は、
苗を二、三本ずつ植えているにもかかわらず、
シゼンタイの稲と比べると茎の増え方が少なく、
根も小さく見えました。
地上に見えている稲だけではなく、
土の中でこれほど違いが出ていることに驚きました。

※左がシゼンタイの稲、右が従来の方法で育てられた稲
そして次は、なんと根の匂い比べです。
シゼンタイ代表の佐伯さんから、
「根の匂いを比べてみて」
と言われました。
「え、稲の根を嗅ぐの!?」
と思いながら嗅いでみて、さらにびっくり‼
シゼンタイの稲の根からは、
ほとんど匂いを感じませんでした。
一方、比較した稲の根からは、
薬品を思わせるような匂いが感じられました。
もちろん、匂いだけで栽培方法や土の状態を
判断できるわけではありません。
それでも、同じ場所で二つの稲を自分の手で抜き、
根の大きさを見て、触れて、匂いまで比べた体験は、
とても印象に残りました。
「自然の力で育つ」
言葉だけなら、何となくイメージできます。
けれど、やはり百聞は一見にしかず。
目の前に広がる大きな根を見て、
植物が本来持っている力の大きさを実感しました。
🌾 肥料や除草剤に頼らず、どうやって育てるの?
ここで疑問が湧きます。
「肥料を入れないのに、どうしてこんなに育つの?」
「除草剤を使わずに、雑草はどうするの?」
その疑問に、佐伯さんが答えてくださいました。
大切なのは、まず土の環境を整えること。
冬の間にマメ科などの植物を育て、
その植物と土の中の微生物の働きを生かしながら、
次の稲が育つ土をつくります。
そして田植え前には、
水を張った田んぼの土を整えます。
田植え後もしばらくは雑草を抑える作業をしますが、
その後はむやみに田んぼへ入って土をかき乱さないことも
大切なのだそうです。
つまり、
何もしないわけではありません。
かといって、
人の手ですべてを管理するわけでもありません。
土や稲の状態をよく見ながら、
いつ手を入れるのか。
どう見守るのか。
その時々に合った必要なことを選んでいるのです。
私はこのお話がとても印象に残りました。
🌿 同じ苗でも、育つ環境によってこんなに違う
田んぼの次は、畑へ向かいました。
今年は厳しい暑さが続き、
中国地方でも長い間、雨の少ない時期がありました。
福山で私たちが活動している畑は、
海に面した山の斜面にあり、風もよく通ります。
そのため土はカラカラになっていました。
ところが大山では、雨の少ない時期にも朝露がしっかり降り、
水やりをしなくても土に潤いが保たれるそうです。
大山の畑には「黒ボク土」と呼ばれる
黒っぽい土が広がっています。
土だけでなく、朝露、気温、山の地形など、
さまざまな条件が植物を育てています。
そして驚いたのが、前回訪れたときに植えた
ホーリーバジルです。
大山では背丈がおよそ背丈70センチ。
横にも大きく広がっていました。
同じ苗を福山でも育てていますが、
こちらはおよそ背丈30センチ。
もちろん福山の株も元気に育っています。
それでも、同じところから来た苗が、
育つ場所によってこれほど違う姿になる。
植物そのものが持つ力だけではなく、
土、水、気候など、その植物を取り巻く環境もまた、
育つ力に大きく関わっている。
そんなことを、目の前の植物から教えてもらった気がしました。
🌿 「自然に任せる」と「何もしない」は違う
今回、大山で自然栽培を見て、改めて感じたことがあります。
自然の力を生かすということは、
「何もしない」ことではありません。
植物が自分の力で育つための環境を整える。
よく観察する。
必要な時には手を入れる。
そして、あとは植物自身の力に任せる。
大きく広がった稲の根を見ながら、
「植物は、こんなにも自分で育つ力を持っているんだ」
と実感しました。
そして鍼灸師である私は、植物を見ながら、
人の体のことを考えていました。
そのお話は、次回へ!


